診療放射線技師・臨床検査技師の業務、放射線漏洩線量測定、安全管理研修、遠隔読影の会社です
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一般財団法人京都工場保健会

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視聴期間は2024年2月9日〜5月9日23:59までとなります。

期間内に研修を修了されますよう、よろしくお願い申し上げます。



質疑応答



Q.放射線安全管理指針の作成方法を教えてください。また、改訂する際などポイントがあればアドバイスお願いします。


A. 新型コロナウィルスの影響で全国的に保健所の立ち入りがあまり実施されておらず、細かな指摘事項については把握しきれておりません。何卒ご了承ください。

まず、基本的な安全指針の作成方法については下記リンク先をご参照ください。
  • 診療用放射線の安全利用のための指針モデル|日本放射線技師会 


  • 作成にあたってポイントとしては3つあります。
    ①線量記録の保管期間については照射録と同じ3年、もしくはカルテなどの診療録と同じ5年にするかは院内で話し合って決めてください。
    ②インシデントや事故発生時の報告体制についても事前に決めておくと良いと思います。既に医療安全委員会等で報告フローができていると思いますので、そちらを流用されるのも手かと思います。
    ③研修方法や回数については指針に明記しておくと良いでしょう。

    最後に、改訂に関してですが、一例として2020年7月に【DRLs2015】から【DRLs2020】へ変更がありましたので、これに合わせて線量管理の項目を見直してはいかがでしょうか?その他、院内でのルールの変更等がなければ指針はそのままで良いかと思います。

    また、以下に放射線安全管理指針のサンプルファイル(Word)のリンクを貼ります。ご参考いただけますと幸いです。

    放射線安全管理指針サンプル




    Q.患者への被ばく説明は医師がすべて行わなければいけないのでしょうか?


    A. 放射線診療の正当化については医師が説明を行う必要があります。しかし、被ばくについての説明は、各施設の考え方にもよりますが、必ずしも医師が行う必要はないと考えます。
    医学放射線学会のQ&Aでは、「依頼医が説明と同意を得た旨をカルテに記載すること」とあります。しかし、電子カルテから説明文書を発行できて、その発行履歴が残る場合はそれをもってカルテ記載とみなしても良いとされています。また、カルテから出力せずに事前に印刷した説明文書を患者に手渡す場合でも、カルテに「説明は既定の方法で行った」と記載することも良いとされています。各施設で検査の同意書および被ばくの説明用紙を作成し運用する方法がスタッフの負担が少ないのではないかと思います。
    その他、患者から詳細な問い合わせがあった時のために、医療放射線安全管理者や放射線科などに専用の窓口を別途設ければよいかと思います。




    Q.被ばく管理システムは導入すべきですか?その際の選定ポイントなどあれば教えてください


    A. 当院(横浜医療センター)では被ばく管理システムを導入していますが、私は被ばく管理システムは必須ではないと考えております。
    線量管理システムを使用すれば、被ばく管理担当者の負担は減ると思います。
    しかし、DRLと自施設の線量を比較する際は、スライドでもお話した通り、各プロトコル毎に最低20例以上のデータの中央値と比較すれば十分ですので、線量管理システムがなくても十分検証は可能です。(J-RIME:最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定(その2) 説明資料)

    例えば線量の他施設比較をしたい、患者個人の被ばく歴を一元管理したい、血管撮影の皮膚線量分布をシミュレーションしたいなど+αを求める場合に導入を検討すればよいと思います。

    メーカー選定のポイントは、まず管理したいモダリティの範囲を施設内でしっかり定めることが大事です。
    後は集めたデータからDRLとの比較が簡便にできるか、抽出したデータから会議資料や患者説明用の資料は作れるか、臓器線量は必要か、他施設比較は必要か、電子カルテ、RISとの親和性は必要かなどを施設内でよく検討し、必要でしたら専用の線量管理システムを検討してみてください。ただこちらは比較的高コストだと思います。
    また、RISのベンダーでもRDSRや画像から線量情報を取り込んで記録するオプションを持っているベンダーもありますので、簡便で良いならシステム更新の際にRISに組み込むのもコスト面でも管理面でも良いのではないかと考えております。




    Q.胸部レントゲンなど低線量領域の線量記録も今後は必要になっていくのでしょうか?

    A. 一般撮影は現状法令においての線量記録義務はありませんが、医政局の通知※1においては必要に応じて記録することが望ましいと記載があります。
    ですが、現状は記録方法の難しさ(自動化するには、装置に面積線量計の装備が必要)と過剰照射等による事例発生の可能性の低さから、断言することはできませんが今後も線量記録が義務化される可能性は低いのではないかと考えております。
     ですので、低線量領域の記録を行うかは各施設の考え方に一任されます。
    現状は、記録したデータの利用を基準に必要かどうかを考えてみてはいかがでしょうか。
    例えば、患者説明の際により正確な値を伝えたい、DRLとの比較のためのデータを簡便に取得したい、撮影者の違いによる線量差をなるべく少なくするなどの教育的な目的、日本診療放射線技師会が認定する被ばく低減認定施設の取得を目指す等が挙げられます。
    装置の表示線量から自動で記録を出力できるシステムを構築できるようでしたら、導入コストを考慮した上で記録することも考えてみても良いのかもしれません。
    現状、一般撮影等の線量記録は多大な労力を要するので、明確な目的がない限りは従来通り照射録の撮影条件の記録だけで十分ではないでしょうか。
    ※1医政発 0312第 7 号